伊勢湾の北部、名古屋市に隣接する愛知県飛島村。
伊勢湾岸道や名二環(名古屋第二環状自動車道)のインターチェンジやジャンクションでその名を見たことのある人も多いのではないでしょうか。周辺は港湾や工場や発電所施設が集積しており、高速道路の緑色の標識に書かれた「飛島」の文字を見てもそれがまさか村の名前だとは思いもしなかった、という人もいるかもしれません。
なぜ人口5000人弱で「金持ちの村」なのか
飛島JCTから名古屋のレゴランドまでは伊勢湾に架かる名港西大橋でわずか2kmという近さ。村の全体が干拓や埋め立てによって構成された飛島村ですが、知る人ぞ知る「日本一リッチな村」としてたびたびメディアでも取り上げられています。
歴史を紐解くと、戦前には貧しい村の一つであった飛島村。そこに東南海地震や戦火の打撃も被ります。極めつけは1959年の伊勢湾台風でした。
ただ、その際に当時の県知事が台風の直撃を受けた湾岸部に臨海工業地帯の建設を計画したことで状況が変化します。伊勢湾岸の埋め立てに伴い巨大な貯木場が完成、やがて造船鉄鋼産業地や貿易・物流の拠点事業所などが多数置かれるようになり、飛島村もぐんぐんと潤っていきました。
その潤沢な固定資産税収入を現在人口5,000人にも満たない村民に割り当てることができる「日本一の金持ち村」として名を馳せたというのが、飛島村の歴史なのです。
正しくは「飛島村」。「飛鳥村」は現存しない
ここまで、愛知県飛島村を「あすかむら」と読んでいた(or 呼んでいた)人はいませんでしょうか。タイトルにも書いてしまいましたが、あくまで村の名前は「飛島(とびしま)」が正解。島と鳥を見間違えている人が、案外多いようです。
ただし「飛鳥村」は過去に存在こそしていた
字面が似ている「飛島」と「飛鳥」。実際にGoogleなどで「”飛鳥村” “飛島村”」で検索してみても、(ここではあえて載せませんが)飛島村について紹介している文章の中に「飛鳥村」が混同している記事がちらほら…。
本記事のように「飛鳥村ではないですよ」と指摘してる記事も多少あるとは思いますが、記事執筆時点で約25,000件以上がヒットする状況です。
ただ、自治体としての「飛鳥村」は過去には実在していました。
- 三重県南牟婁郡飛鳥村(1954年合併により消滅、現在の熊野市)
- 奈良県高市郡飛鳥村(1956年合併により消滅、現在の高市郡明日香村)
特に奈良県の飛鳥村(現・明日香村)は飛鳥時代ゆかりの地であるなど社会科の授業でも馴染みのある地名ですから、「飛鳥」っぽい字面をつい「あすか」と読んでしまうのも気持ちは理解できます。
余談ですが、上記の愛知県・三重県・奈良県は東から西に陸続きの隣県同士。今回の3地点はいずれも物理的に距離がありますので直接的な由来はないのかもしれませんが、面白い繋がりですね。
「飛島村」と「asuka」
ついでに、「”飛島村” “asukamura”」というちょっと意地悪な検索も。こちらも画像には出しませんが、約100件の記事がヒットしました。この検索語句で出てくるページの多くは、
- 愛知県飛島村について紹介する記事なのに、サイトURLに「asukamura」と表記している
というパターン。
「飛島」と記述するには「とびしま」と入力しなければいけないため、このケースが該当するサイトは執筆者(「とびしま」で認識)と投稿者(「あすか」で認識)で分業されている、ということになるのかもしれません。
関連リンク:飛島村