ネットショッピングでCDが買えるようになり、さらに曲単位が音楽ファイルでバラ売りされるようになり、さらに音楽自体が定額制で好きな時に聴けるようになり。時代とともにCDは売れなくなり、レコードショップは街から存在感を失っていきました。
音楽文化を支えた2大CDショップ
アメリカ発、黄色と赤のタワーレコード。イギリス発、ピンクと黒のHMV。日本国内における外資系大手レコード販売店の両雄として、80・90年代の音楽カルチャーを大きく支えてきました。
TSUTAYAや新星堂や山野楽器もいいけれど、舶来レコードショップにしかないときめきがある。そう思われる方も少なくはないのではないでしょうか。
2000年以降、両社ともに実店舗の閉店が続発
とはいえ現実は残酷です。
HMVで言えば、都内だけでも上野のABABにあったHMV上野(2007年閉店)やHMV原宿(ラフォーレ原宿内。2007年)、HMV池袋サンシャイン60通(2009年)、HMVアトレ目黒(2014年)などが相次いで閉店。特に渋谷センター街にあった“渋谷系の聖地”HMV渋谷の閉店(2010年)は業界に大きな衝撃を与えました(ただし渋谷では場所と店名を変えてのちに復活)。
タワレコも状況は同じ。横浜みなとみらい店(2013年)、千葉店(2016年)、梅田大阪マルビル店(2022年)、吉祥寺店(2022年)などといった大都市の店舗でも閉店が続いています。商業施設自体の閉業のタイミングが重なった例もありますが、これらの店舗は近隣の別ビルへの移転なども行われないままでした。
タワーレコード・HMVとも存在しない県は13県
惨状に目を覆いたくなりつつ、表題について調べました。2024年現在、タワーレコード・HMVともに店舗がない都道府県は以下の13県です。読んだら地元の友達にシェアしてあげてくださいね!
山形県
東北唯一の空白地帯となってしまった山形県。仙台まで近いことも一因かもしれません。県内では代わりに書店チェーンのこまつ書店が奮闘しています。
福井県
福井県は現在47都道府県で唯一イオンがない県でもあります(※マックスバリュはある)。でしたが、2024年7月13日そよら福井開発のオープンによって2003年のジャスコ撤退以来実に21年ぶりに(イオンとしては初めて)復帰しました。(2024年7月追記)
山梨県
東京の隣なのに(だから?)不遇の山梨県。甲府から最も近いのはタワレコ八王子店タワレコららぽーと立川立飛店かタワレコアリオ橋本店あたりのようです。(2024年4月追記:タワレコ八王子店は2024年3月31日閉店)
滋賀県
滋賀県はかつてはタワレコもHMVもある県でした。
HMVイオンモール草津は2010年7月に閉店。2008年9月のイオンモール草津(草津市)開業と同時の開店でしたが、2年弱の短命に終わっています。
大津パルコ(大津市)にあったタワレコ大津店も2017年8月のパルコ閉店とともに撤退。こちらは1996年11月のオープンから20余年に渡り滋賀の音楽文化を支えました。
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和歌山県
和歌山ビブレ(和歌山市)内にタワーレコード和歌山店がありましたが、2001年5月のビブレ閉店に伴い県内から撤退しています。
鳥取県
中四国、特に山陰は厳しい現状にあります。
ただ鳥取・島根両県では米子市に本社を置く今井書店グループが山陰地方最大規模の書店グループとして気を吐き、業務提携により店内に併設するTSUTAYAでCDの販売を行なっている店舗も存在します。
島根県
今井書店グループと同様に山陰2県を拠点とするブックセンターコスモが出雲市内に1店舗存在しますが、こちらもタワレコやHMVはなし。
山口県
両隣を政令指定都市を抱える県(広島県・福岡県)に挟まれた山口県。それでも県都の山口市街からは最短のタワレコ若松店(福岡県北九州市)までは高速道路で1時間半を要します。
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徳島県
四国の他3県が現在または過去にタワレコorHMVの出店があった中、唯一出店歴がないのが徳島県です。
愛媛県
ラフォーレ原宿・松山(松山市)内にタワレコ松山店がありましたが、ラフォーレが耐震診断を満たしていなかったことの煽りを受ける形で2007年に撤退。ラフォーレ自体も2008年に閉館しています。
長崎県
アミュプラザ長崎(長崎市)のタワレコ長崎店は2015年11月に閉店。九州7県でタワレコ進出が最も遅れたのも長崎県でした(2000年9月21日開店。佐賀店は同年9月9日だった)。
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熊本県
政令指定都市(熊本市、人口74万人)を擁する県で唯一ラインナップしてしまった熊本県。2007年2月にタワレコ八代店が閉店。2011年8月にタワレコ熊本パルコ店(旧・熊本店)も閉店しています。
宮崎県
熊本県と同様にタワレコが2店舗撤退しています。2007年3月にMRT micc宮崎店(宮崎市)が、イオンモール宮崎店(旧・イオン宮崎ショッピングセンター店)も2014年8月に閉店しました。
タワーレコード・HMVともに存在しない政令指定都市
2024年現在、全国に20市ある政令指定都市。こちらはどうでしょうか。
堺市
2008年3月アリオ鳳(西区)の開業に合わせてHMVアリオ鳳がオープンしましたが、わずか2年半後の2010年11月に閉店してしまいました。
熊本市
先述のとおり2011年のタワレコ熊本パルコ店閉店を最後にゼロが続いています。
県内にタワーレコードorHMVはあるのに県庁所在地に店舗がない県
タワレコ・HMVとも郊外の大型商業施設内の出店が多い傾向にあり、そうした背景から県の中心市である県庁所在地に店舗がない例もいくつか存在します。
青森県(青森市)
つがる市にHMVイオンモールつがる柏が、おいらせ町(イオンモール下田)にタワレコ下田店が存在。津軽地方と南部地方のイオンモールにそれぞれ1店舗ずつ有するものの、県都の青森市にはありません。(2024年1月追記:タワレコ下田店は2024年1月8日閉店)
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福島県(福島市)
郡山市のJR郡山駅西口にタワレコ郡山店があるのみ。福島市は県庁所在地ではあるものの、人口ではいわき市・郡山市に次ぐ第3都市であるという事情もあります。
群馬県(前橋市)
こちらも福島県と同じケース。前橋市を抑えて県最大都市である高崎市にHMVイオンモール高崎とタワレコ高崎オーパ店があります。ほかHMVイオンモール太田店も。
富山県(富山市)
県内にはHMVイオンモール高岡店のみ。
長野県(長野市)
長野市でも松本市でもなく、上田市のイオン上田ショッピングセンター内に県内唯一の店舗・タワレコ上田店が存在します。
岐阜県(岐阜市)
本巣市のモレラ岐阜にタワレコが、各務原市のイオンモール各務原にHMVが出店。いずれも岐阜市に隣接する市です。存在するのみ。(2024年1月追記:HMVイオンモール各務原は2023年8月20日に閉店)
三重県(津市)
タワレコがイオンモール鈴鹿に入るのが唯一です。
奈良県(奈良市)
三重県と同様、イオンモール橿原にタワレコが出店しているのみ。
ここまで見てきて、やはりイオンモールでの多さが圧倒的でした。
「リリイベ来てもらえない」若い世代の悲嘆も
調べていて予想外に聞こえてきたのが、10代・20代の悲鳴。ミュージシャンやアイドルの新譜リリースにおける全国行脚の際に自分の街が飛ばされる・来てもらえる店がないというものでした。
もっともな話で、現代のレコードショップはソフトを売ることよりもイベントの受け皿としての機能が色濃いように見えます。
オンラインで楽曲も映像も容易に手に入りSNSでアーティストとの仮想的な距離感も近くなりました。コロナ禍を経た昨今では尚更のこと、生身の姿を拝む感動というのはむしろ一昔前よりも格別なものになっているのかもしれません。
タイアップやイベントでのタッグを考えれば、全国に展開する2社の影響力はまだまだ無視できません。
今回ゼロではなかったものの、新潟県(タワレコ新潟店の1店舗のみ)や広島県(タワレコ広島店の1店舗のみ)など政令市を持つ地域でもいささか心細い状況にあるようです。(2024年1月追記:京都府もHMV洛北阪急スクエアが2023年10月15日に閉店したため現在タワレコ京都店の1店舗のみ)